
前回、人間とAIではサイトを見ている場所が違う、というお話をしました。
人間はプロフィール写真や経歴の文章を「目で見て」判断するけれど、AIはページの裏側にある機械向けの情報を読んでいる。その機械向けの情報こそが「構造化データ」であり、いわばAIだけが読める専門家としての身分証なのだ、と。
では、その「身分証」とは具体的に何なのでしょうか。今回はコードや技術用語の話ではなく、私たちが普段から手にしている身近なものにたとえながら、その正体をゆっくり解きほぐしていきます。読み終えるころには、「AIに認識される」とはどういうことかが、すっと腑に落ちているはずです。
これまでの『士業サイトの「AI検索(AIO)」対策入門』はこちら
→第1回:士業サイトの「AI検索(AIO)」対策入門:なぜ実績豊富な先生のサイトがAI検索で「見えない」のか
→番外編:【号外】AI検索に『お気に入り登録』機能 ── 士業サイトに今、起きていること
名刺とパスポートは、何が違うのか
少し回り道に聞こえるかもしれませんが、まず「名刺」と「パスポート」を思い浮かべてみてください。どちらも自分が何者かを伝える紙です。けれど、その性格はずいぶん違います。
名刺は、自分で自由に作れます。肩書きも、デザインも、載せる情報も、すべて自分の裁量です。
「代表」と書こうが「相続のスペシャリスト」と書こうが、誰の許可もいりません。
受け取った人間は、その名刺と、目の前の本人の印象とを合わせて「どういう人か」を感じ取ります。
一方パスポートは、自由には作れません。
氏名はここ、生年月日はここ、というように、世界共通の決まった書式で、決まった欄に、決まった形式で情報が並んでいます。
だからこそ、どの国の入国審査官が見ても、同じ場所を見れば同じ情報を、迷いなく読み取れる。
名前を探して紙の裏を探したり、書いてある文章を解釈し直したりする必要がありません。
士業サイトに置き換えると、普通のWebページの文章は「名刺」にあたります。
プロフィールページに自由な言葉で経歴を書き、デザインを整える。
人間の訪問者は、それを読んで信頼性を判断します。これはこれで、とても大切なことです。
これに対して、構造化データは「パスポート」にあたります。
決まった書式に従って、決まった欄に情報が整理されている。
だからAIは、文章を解釈し直すことなく、必要な情報を必要な場所から正確に読み取れるのです。
前回「AIは言葉ではなく構造で判断する」とお伝えしたのは、まさにこの違いのことでした。
身分証は「自分で書く」。だから書式が命になる
ここで、ひとつ正直にお伝えしておかなければならないことがあります。
構造化データという「パスポート」は、役所が発行してくれるものではありません。
実際には、サイトの持ち主(あるいは制作を任された私たちのような制作会社)が、自分で書いて、自分のサイトに埋め込むものです。
「氏名は山田太郎」「資格は司法書士」「登録番号はこれ」と記入していく作業そのものは、突き詰めれば自己申告にすぎません。
そう聞くと、「なんだ、結局は名刺と同じで好きに書けるだけではないか」と思われるかもしれません。
けれど、ここに決定的な違いがあります。
名刺は自由な書式で書けるのに対し、構造化データは決まった様式の、決まった欄に書かなければ機械に受け取ってもらえない、という点です。
世界共通のこの記入ルールには「Schema.org(スキーマ・オルグ)」という名前がついていますが、ここでは「みんなが従っている、世界共通の記入ルール」とだけ理解しておけば十分です。
感覚としては、役所に提出する申告書に近いかもしれません。
申告書は自分で書くものですが、決まった様式の決まった欄に書くからこそ、窓口で受理され、機械的に処理されていきます。
逆に、様式から外れた白紙にどれだけ詳しく丁寧に事情を書き込んでも、受け付けてはもらえません。
「内容の濃さ」ではなく「正しい欄に、正しく記入されているか」が問われるわけです。
構造化データもこれと同じです。
自己申告であっても、決められた書式どおりに正しく記入されていれば、AIはそれを「読み取れる情報」として受け取ります。
だからこそ、中身が正しく記入できているかどうかが、すべてを左右するのです。
なお、「自己申告の中身が本当に本物なのか、それをどうやってAIに信じてもらうのか」という疑問は、当然わいてくると思います。
実はそこにも工夫の余地があるのですが、その話はもう少し先の回で詳しくお話しします。
今回はまず、「決まった書式で正しく記入することが出発点になる」という一点を押さえてください。
身分証の「記入欄」を覗いてみる
では、士業サイトの「身分証」には、どんな記入欄が並んでいるのでしょうか。
パスポートに氏名や生年月日の欄があるように、構造化データにも、専門家であることを伝えるための欄が用意されています。
司法書士の先生を例に、主な欄を並べてみます。
氏名:山田 太郎
資格:司法書士
登録番号:東京 第◯◯号
所属会:東京司法書士会
対応分野:相続登記・遺言・成年後見
対応エリア:新宿区・渋谷区ほか
人間が読めば「ああ、東京司法書士会所属の司法書士の先生だな」と一目でわかる情報です。
けれど大事なのは、これらが文章として書かれているのではなく、「氏名の欄」「資格の欄」「登録番号の欄」と、それぞれ決まった場所に整理されて入っているということ。
だからAIは、「この欄に入っているのが資格名だ」「ここにあるのが所属団体だ」と、迷わず読み取れるのです。
これは司法書士に限った話ではありません。
税理士なら資格の欄に「税理士」、社労士なら「社会保険労務士」、行政書士なら「行政書士」が入る。
並んでいる欄は同じで、中身が各士業のものに替わるだけです。
どの士業の先生であっても、この「記入欄を正しく埋める」という考え方は共通します。
では、この欄を実際にどう埋めていくのか。
プロフィールページを題材にした具体的な書き方は、次回詳しくお話しします。
今回はまず、「身分証には決まった記入欄がある」というイメージを持っていただければ十分です。
欄が空欄だと、AIは「身元不明」として扱う
ここまでで、構造化データという身分証には決まった記入欄があり、そこを正しく埋めることが大切だ、とお伝えしてきました。
ではもし、その欄が空欄のままだったら、何が起きるのでしょうか。
ここに、多くの先生が見落としている落とし穴があります。
人間の訪問者であれば、たとえAI用の欄が空欄でも、プロフィールページの文章を読んで「立派な経歴の先生だ」と理解してくれます。
けれどAIは違います。
AI用の記入欄が空欄であれば、AIはそれを「記入されていない=確認できない」と扱うのです。
どれほど豊富な実績が人間向けの文章で綴られていても、機械が読む欄が空白なら、AIにとっては「身元の確認が取れない相手」になってしまう。
イメージとしては、中身が真っ白なパスポートを持って、入国審査の列に並んでいるようなものです。
本人はまぎれもなく本物で、立派な経歴の持ち主なのに、審査官(AI)は確認すべき欄が空白なので、「この人が誰なのか確認できません」と判断せざるをえない。
結果として、列の先へは進めません。
前回、「20年の実績を持つ先生より、開業3年目の事務所の整ったサイトのほうが、AIに見つけてもらえてしまう」という現実をお伝えしました。
その差が生まれる理由が、まさにこれです。
実力や経験の差ではなく、AI用の記入欄が埋まっているかどうか。
その一点で、AIから見た「見つけやすさ」が分かれてしまうのです。
あなたのサイトの「身分証」は、正しく記入されているか
ここまで読んで、ひとつの問いが浮かんでこないでしょうか。
「では、自分のサイトの身分証は、決まった書式でちゃんと記入されているのだろうか?」
そして厄介なことに、この問いには自分では答えにくいのです。
構造化データはページの裏側にある、人間の目には触れない情報です。
普段ブラウザで自分のサイトを開いて眺めているだけでは、記入欄が埋まっているのか空欄なのか、そもそも身分証が存在しているのかどうかすら、見えてきません。
表向きは立派に表示されているサイトほど、「裏側は空欄だった」と気づきにくいものです。
だからこそ、一度きちんと裏側を確認しておくことに意味があります。
自分のサイトが、AIから見て「記入済みの身分証を持った本物の専門家」として認識される状態になっているのか。
それとも、空欄のパスポートで審査の列に並んだままなのか。
当社では、「士業サイトのAI検索(AIO)適合度診断」をご用意しています。
先生のサイトに構造化データが実装されているか、実装されていても士業に必要な「資格・所属会・登録番号」といった欄が正しく記入されているか、士業サイトを専門に手がけてきた当社の担当者が診断いたします。ご自身では見えない「裏側の身分証」を、一度確かめてみてください。
受付の詳細は、先日メルマガにてご案内いたしました。
メルマガをご購読の方から無料診断を受け付けておりますのでご興味がありましたらお気軽にお問い合わせください。
一般の受付は後日ご案内いたしますので暫しお待ちください。
次回は、その身分証の中でも最も重要な「プロフィールページ」を取り上げ、何をどう記入すればAIに専門家として認識されるのかを、具体的にお話しします。


