士業サイトの「検索意図」入門 ― なぜ「キーワード網羅型」のページがSEOで届かなくなったのか

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「相続」「会社設立」「労務管理」。先生の事務所のサイトには、こうしたキーワードを含むページがすでに何ページもあるはずです。情報量にもこだわって、丁寧に書かれているサイトも多いでしょう。

ところが最近、「ページ数を増やしているのに問い合わせが伸びない」「以前ほど上位に出てこなくなった気がする」という声を、よくお聞きします。これは決して、先生の事務所だけの話ではありません。実は、検索エンジンの「評価軸」そのものが、ここ数年で大きく変わっています。

これまでの入門編では、AI検索(AIO)時代における構造化データのお話をお伝えしてきました。今回は少しテーマを変えて、その手前にある「検索の考え方」そのもののアップデートについて、前後編にわたって整理していきます。

1. 昔のSEOと今のSEOで、何が変わったのか

まず、5〜10年ほど前のSEO(検索エンジン最適化)の考え方を振り返ってみます。

当時、検索順位を上げる王道はシンプルでした。
「相続登記」というキーワードで上位を取りたければ、相続登記に関するありとあらゆる情報を1ページに詰め込み、「相続登記の全ガイド」のような、ボリューム満点のページを作る。これが定石でした。検索エンジンは「そのキーワードがたくさん書かれている=そのテーマに詳しいページ」と判断し、上位に表示してくれていたからです。

司法書士の先生のサイトでも、「相続」というキーワードを軸に、手続きの種類、必要書類、法務局の場所、登録免許税、期限……と、ありとあらゆる情報を1ページにまとめた「全ガイド型」のページを作った経験があるのではないでしょうか。当時はそれが、最も効果のある書き方でした。

しかし、いつの頃からか、その手法が通用しにくくなってきます。情報量を増やしているのに順位が上がらない、それどころか、もっとコンパクトなページのほうが上に来ている、ということが起きるようになりました。

これは、検索エンジンの判断基準が「キーワードがどれだけ含まれているか」から、「ユーザーが本当に求めている答えに、どれだけ近いか」に大きくシフトしたためです。

似たような変化は、ネット広告の世界でも起きています。

Google広告では「部分一致」というキーワード設定が「インテントマッチ(検索意図一致)」という名称に変わり、入力された単語だけでなく、その背後にある「ユーザーの意図」を機械が汲み取って広告を配信する仕組みに置き換わりました。これは偶然ではありません。検索広告も自然検索も、同じく「意図を読む」方向に進化しているのです。

2. AI検索の登場が、この流れを決定的に加速させた

そしてもう1つ、この流れを決定的に加速させたのが、ChatGPTやGoogle AI OverviewといったAI検索の登場です。

これまでの入門編でお伝えしてきたとおり、AI検索は「キーワードに一致するページ」を一覧で返すのではなく、利用者の質問に対して「最も適した答え」を直接生成して返します。つまりAIは、利用者の検索した言葉そのものではなく、「この人は結局、何を知りたくて、何に困っているのか」を読み取ろうとしているわけです。

たとえば「相続登記 期限 過ぎた」と検索したとき、AIが推測するのは「期限を過ぎても何とかなる方法を知りたい人だな」「あるいは罰則を心配している人だな」という、検索者の状況や心理です。そこにフィットする答えを出すのが、AIの役割になりました。

検索アルゴリズムも、AI検索も、向かっている方向は同じです。「キーワードを書いてあるページ」ではなく、「検索者の意図に応えているページ」が評価される時代になった。これが、今のサイト運営の大前提になっています。

3. 「検索意図」を4つに分けて捉える

ではその「検索意図」とは、具体的にどう捉えればよいのか。

検索意図は大きく4つに分類できると言われています。司法書士の業務「相続登記」を例に、整理してみます。

Know(知りたい)

「相続登記 義務化」「相続登記 期限」など、まずは情報を知りたい段階。これから動こうとしている人。

Do(やりたい・調べたい)

「相続登記 自分で やり方」「相続登記 必要書類」など、具体的に行動の準備をしている段階。自力でやれるか、誰かに頼むか、検討中の人。

Buy(相談・依頼したい)

「新宿区 相続登記 司法書士」「相続登記 費用 相場」など、専門家への依頼を視野に入れている段階。受任に最も近い、熱量の高い層。

Go(行きたい・特定の場所を探している)

「新宿 法務局」「東京司法書士会」など、特定の場所や組織を直接探している段階。

同じ「相続登記」という業務でも、検索者の状況によって、求めている答えはまったく違うことが分かります。「全ガイド型」のページが効きにくくなったのは、この4つを1ページに詰め込もうとすると、結局どの層にも刺さらないページになってしまうからです。

今は、1つのページで1つの検索意図に応えるという設計が、検索エンジンにもAIにも評価されやすくなっています。Knowの人にはKnow向けの解説を、Buyの人にはBuy向けの料金や事例を、それぞれ別ページで用意するイメージです。

4. BtoCとBtoBで、検索者の心理は決定的に違う

検索意図を読むうえで、もう1つ大切な視点があります。「BtoCか、BtoBか」という切り分けです。

士業の業務には、個人のお客様(BtoC)に向けたものと、法人・経営者(BtoB)に向けたものがあります。両者は、検索窓に向かう「心理」が決定的に違います。

BtoC:切迫した悩みと、感情的な安心感を求めている

たとえば、相続放棄の期限である3ヶ月を過ぎてしまった方が、「相続放棄 期限 過ぎた」と検索しているとします。この人の表向きのニーズは「期限を過ぎてもどうにかなる方法を知りたい」ですが、本音はもっと切実です。「親の借金を背負わずに済む方法はないのか」「今からでも助けてくれる専門家はいないのか」という、強い不安と恐怖を抱えて検索しています。

ここに「相続放棄は原則3ヶ月以内です」とだけ書かれたページが出てきても、その方の気持ちには響きません。期限を過ぎたケースでも対応できる可能性があること、そのときの進め方、相談の流れ。感情に寄り添った安心感を伝えることが、受任の入口になります。

BtoB:リスク回避と費用対効果、論理的な納得感を求めている

一方、企業の人事担当者が「問題社員 対応」と検索したとします。表向きのニーズは「勤務態度に問題のある社員に、どう対応すべきか知りたい」ですが、本音は別のところにあります。「不当解雇で訴えられる企業リスクを絶対に避けたい」「穏便かつ法的に安全な手順を、上司や役員に説明できる形で知りたい」というのが、本当の検索動機です。

ここで効くのは、感情ではなく論理です。リスクの整理、対応のステップ、判例の傾向、社労士に相談した場合のコストとリターン。「これなら社内で稟議が通せる」と思える情報が、問い合わせにつながります。

同じ士業の発信であっても、相手がBtoCかBtoBかで、書くべき言葉も、出すべき情報も、まったく違ってくるのです。

5. 結び:「キーワード」ではなく「悩み」から逆算する

これまでのSEOは、「キーワードを書けば評価される」時代でした。これからのSEO、そしてAI検索の時代は、「お客様の悩みに応えているページが評価される」時代です。

サイトを作るときに先生方に意識していただきたいのは、たった1つです。「このキーワードでページを作る」ではなく、「このキーワードを検索する人は、どんな状況で、何に困っているのか」から逆算する。

検索意図を考えることは、目の前の相談者の話を親身に聞くのと、本質的には同じ姿勢です。相談者が何を不安に思い、何を解決したいのか。それを汲み取る力は、先生方が実務で日々発揮されているものに他なりません。

サイトの発信でも、その姿勢をそのまま言葉に置き換えていく。今、検索の世界に求められているのは、それだけのことなのです。

次回(後編)では、この「検索意図」の考え方を、実際のページタイトルの作り方にどう落とし込むかを、業務別の具体例で整理していきます。

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