
前回のコラムでは、「キーワードを網羅すれば評価される時代は終わり、検索している人の『悩み』に応えているかが問われる時代になった」というお話をしました。
では、その「悩みに応えるページ」とは、具体的にどんなページなのか。今回は、士業サイトにおいて最も効果が高く、しかも先生ご自身にしか作れない2つのコンテンツ、「FAQ(よくある質問)」と「解決事例」について掘り下げます。
これまでの入門編では構造化データを中心にお伝えしてきましたが、実は「中身として何を書くか」という話には、あまり踏み込んできませんでした。今回はそこを補う、実践的な回とお考えください。
1. 文字数を増やしても、順位が上がらなくなった
かつてのSEOには、分かりやすい必勝法がありました。「あるテーマについて、とにかく長く、詳しく書く」。法律の解説をこれでもかと盛り込み、文字数を増やせば、それだけで検索順位が上がった時代があったのです。
ところが今、この手法はむしろ逆効果になりつつあります。
理由はシンプルです。法律の一般的な解説は、どの事務所のサイトにも同じように書けてしまいます。条文の説明、手続きの流れ、必要書類——こうした「どこかの教科書に載っている情報」を長々と並べただけのページは、検索エンジンから見れば「よそと同じことが書いてある、代わりのきくページ」でしかありません。
さらに言えば、そうした一般的な解説こそ、今やAIが最も得意とする領域です。「相続登記の必要書類は?」と聞けば、ChatGPTが数秒で整然とまとめてくれます。教科書的な情報の価値は、AIの登場によって急速に下がっているのです。
では、何が評価されるのか。答えは「そのサイトにしか載っていない情報」です。
2. いま最も重視される「E(経験)」― 先生だけが持つ一次情報
Googleが掲げる評価基準に、「E-E-A-T」というものがあります。Experience(経験)、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)の頭文字で、入門編でも権威性・信頼性の部分に触れてきました。
今回あらためて注目したいのが、先頭の「E:Experience(経験)」です。
これは、「ネットのどこを探しても載っていない、その事務所だけが持つ、生の経験や実績」を指します。近年、Googleはこの「経験」を、以前にも増して強く重視するようになりました。
司法書士の先生を例に考えてみましょう。「相続登記の義務化とは」という一般的な解説は、誰でも書けます。しかし、「期限を過ぎてしまった相続登記を、実際にどう進めて解決したか」という具体的な経験は、その手続きを実際に担当した先生にしか書けません。この「先生だけが持つ生の情報」を、専門用語で一次情報と呼びます。
そして、この一次情報を最も自然な形で蓄積できるのが、「FAQ」と「解決事例」なのです。
3. なぜ「FAQ」と「解決事例」が効くのか
この2つが強い理由を、3つに整理します。
理由①:AIには絶対に真似できない一次情報だから
AIは、法律の条文をきれいにまとめることは得意です。しかし、先生の事務所で実際に起きた「相談者のリアルな悩み → 先生ならではの解決プロセス → その結果」という一連のドラマは、AIには知りようがありません。解決事例は、AIが逆立ちしても生成できない、最強のオリジナルコンテンツになります。
理由②:検索している人の「知りたいこと」に直撃するから
前回、検索意図には Know(知りたい)・Do(やりたい)といった段階があるとお伝えしました。悩んでいる人が本当に知りたいのは、「法律の定義」ではなく、「自分と似た状況の人が、どうやって解決したのか」です。FAQと解決事例は、まさにこの問いに最短で答える形をしています。
理由③:客観的な「事実」が入るから、AIにも引用されやすい
ここは少し意外に思われるかもしれません。AIは、検証できない主観的な表現より、客観的な事実(ファクト)を好んで引用します。
たとえば「親切丁寧に、地域最安値で対応します」という表現は、主観的で裏づけようがないため、AIは引用をためらいます。一方で、「相談実績〇〇件」「初回相談は一律〇〇円(税込)」「〇〇駅から徒歩3分」といった具体的な数字や事実は、AIが安心して引用できます。FAQや解決事例を書くときに、こうした具体的な数字や状況を残しておくことが、そのままAI検索対策になるのです。
4. ChatGPTやAI検索(AIO)に「引用される」ための一手間
ここまでの話は、Google検索だけでなく、AI検索の世界でこそ効いてきます。
いま、「〇〇市で相続に強い司法書士は?」「問題社員への対応で気をつけることは?」といった質問を、ChatGPTやPerplexity、GoogleのAI Overviewに直接投げかける人が急速に増えています。こうしたAIによる検索に最適化する取り組みは、AI検索最適化(AIO)と呼ばれ、近年は GEO(Generative Engine Optimization/生成AI最適化) という別名で語られることも増えてきました。呼び方は違えど、目指すところは同じ。「AIが答えを作るとき、引用元として自分の事務所を選んでもらう」ことです。
そして、AIにとって最も引用しやすいのが、まさにFAQと解決事例です。Q&A形式で整理された質問と答え、「背景・課題・結果」が明確な事例は、AIがそのまま抜き出して使える理想的な形をしています。加えて、最近はスマホに話しかけて「親が亡くなって借金が見つかったけど、相続放棄って今からでも間に合う?」と話し言葉で検索する人も増えました。話し言葉の質問とプロの回答がセットになったFAQは、この流れとも抜群に相性がいいのです。
ただし、ここで一手間必要になります。人間の「見た目」と、AIの「読み方」は違うからです。
私たち人間は、大きな文字で「Q.」と書かれていれば、直感的に「ここは質問だな」と分かります。しかしAIは、画面のデザインを見ているわけではありません。何も対策をしなければ、ただの文字の羅列として読み流してしまうことがあります。
そこで、AIに対して「ここは質問です」「ここは回答です」と、裏側で「名札」をつけてあげる作業が必要になります。これが、入門編で繰り返しお伝えしてきた構造化データです。FAQ向けの構造化データ(FAQPage)を設定しておくと、AIは「このサイトには、明確な質問と回答のデータがある」と認識しやすくなり、AI検索で引用される確率が大きく上がります。
5. まとめ:中身は先生にしか作れない。器は、専門家に任せられる
今回お伝えしたことを整理すると、これからの士業サイトの集客は、2つの役割で成り立ちます。
- 1つは、「中身」を作ること。
日々の相談で積み上げてきた「よくある質問への答え」や「印象に残った解決事例」は、先生ご自身にしか書けない一次情報です。これはAIにも、他の事務所にも真似できません。まずは、最近解決した事例を1つ、メモに書き出してみることから始めてみてください。その1つひとつが、何より強い集客資産になります。 - もう1つは、その中身を「AIに伝わる器」に整えること。
せっかくの一次情報も、構造化データという「名札」がついていなければ、AIには半分しか伝わりません。ただし、こちらは専門的な実装の領域です。先生が難しいコードを書く必要はありません。ここは、サイトを管理する制作会社やWeb担当者に任せられる部分です。
先生にしか作れない「中身」と、専門家が整える「器」。この両輪がそろってはじめて、先生が積み上げてきた実績が、AI検索の時代にも正しく評価されるようになります。日々の相談実績を、ただ埋もれさせず、AIにも読める形でサイトに蓄積していく——それが、これからの最も確実なSEO対策なのです。


