
「検索で1位を取ったのに、以前ほど問い合わせが来ない」
——最近、そんな声をよくお聞きします。
原因は、先生のサイトの質が落ちたからではありません。検索結果の「見え方」そのものが変わったのです。
今、検索画面の一番上には、AIによる要約(AI Overviewなど)が陣取るようになりました。その下にようやく、これまで1位を争ってきたサイトが並びます。つまり、SEOで1位を取っても、その順位はもう画面の「一番上」を意味しなくなってきているのです。
一方で、お金で解決しようとリスティング広告に頼れば、今度はクリック単価の高騰という壁にぶつかります。
「相続」「会社設立」といった人気のキーワードは、資金力のある事務所同士の消耗戦になっています。
では、どうすればいいのか。今回は、この消耗戦から抜け出すための「指名検索」という考え方、そして士業の「ネットブランディング」についてお話しします。
1. 消耗戦から抜け出す鍵は「指名検索」
まず、今のWeb集客で起きている状況を整理します。
「相続 司法書士」のような一般的なキーワード(これを一般キーワードと呼びます)での検索結果は、いわば早い者勝ちの陣取り合戦です。上位はAIの要約と広告に占領され、そのうえ順位を維持するには、絶え間ないSEOの努力と、高騰し続ける広告費が必要になります。体力勝負の消耗戦です。
この戦いから抜け出す方法が、ひとつあります。それが「指名検索」です。
指名検索とは、「相続 司法書士」ではなく、「〇〇司法書士事務所」と、事務所の名前で直接検索してもらうことです。名前で検索してくる人は、すでに先生の事務所を知っていて、信頼を寄せている人です。他社と比較される消耗戦の土俵に乗らず、最初から「あなたにお願いしたい」という状態で来てくれます。
この指名検索を増やすための取り組みこそが、「ネットブランディング」です。
一般キーワードの消耗戦で消耗し続けるのではなく、「あの先生にお願いしたい」と名前で選ばれる状態を作る。これが、これからの最も確実な防衛策になります。
2. 「ブランディング」の誤解を解く
ブランディングと聞くと、身構えてしまう先生も多いかもしれません。「かっこいいロゴを作ること」「大企業のようなイメージ広告を打つこと」——そんなイメージがあるからです。
しかし、士業のネットブランディングは、それとはまったく違います。やることは、突き詰めれば次の2つだけです。
1つ目は、「AIに、専門家として推薦されること」。
「この地域で相続に強い専門家は?」とAIに尋ねたとき、その回答に先生の事務所が挙がる状態を作ること。
2つ目は、「相談者の頭の中に、第一想起を植え付けること」。
「相続のことなら、あの先生だな」と、いざというときに真っ先に名前を思い出してもらうこと。専門用語で「第一想起(だいいちそうき)」と言います。
派手なロゴも、大がかりな広告も必要ありません。「AIに推薦される」ことと「人の記憶に残る」こと。この2つを地道に作っていくのが、士業のネットブランディングの本質です。
3. 実践①:AIから「専門家」として指名される
では、1つ目の「AIに推薦される」には、どうすればいいのか。
ここで効いてくるのが、これまでのコラムで繰り返しお伝えしてきた「ファクト(客観的な事実)」です。
AIは、「親切丁寧」「地域No.1」といった、裏づけのない主観的なアピールを信用しません。AIが専門家として推薦するのは、具体的な事実が積み上がっている事務所です。
たとえば、
- 「相続登記の相談実績 〇〇件」という具体的な数字。
- 「〇〇のケースを、このように解決した」という具体的な解決事例。
- 資格、登録番号、経歴といった、検証できる情報。
こうしたファクトがサイトに豊富に載っていると、AIは「この事務所は、この分野の実績が確かにある専門家だ」と認識します。
その結果、「この地域で相続に強い専門家は?」という質問に対して、引用元として選ばれやすくなります。
抽象的な自己アピールを並べるのではなく、地道な事実を積み上げること。それが、AI時代のブランディングの土台になります。
4. 実践②:広告を「刈り取り」から「デジタルの看板」へ
2つ目の「人の記憶に残る」ために、広告の使い方を見直すという方法もあります。
多くの事務所は、広告を「今すぐ客の刈り取り」に使っています。
「相続 司法書士」で検索した「今すぐ依頼したい人」を、リスティング広告で捕まえる使い方です。
しかし前述のとおり、この土俵は単価が高騰し、消耗戦になっています。
そこで発想を変えて、広告を「デジタルの看板」として使う方法があります。
すぐに依頼する人だけを狙うのではなく、地域の見込み客に、事務所の名前と専門分野を繰り返し目に触れさせる。
ディスプレイ広告やSNS、動画広告などがこれにあたります。
街中の看板と同じ発想です。
今すぐ相続の相談をする人は多くありませんが、「相続のことなら、あの事務所の名前をよく見かけるな」という記憶を、地域の人々の頭の中に少しずつ蓄積していく。
そして、いざ相続が発生したとき、その人は一般キーワードで検索するのではなく、覚えていた事務所の名前で「指名検索」をしてくれる——これが狙いです。
広告を「刈り取りの道具」から「記憶に残すための看板」へ。この視点の転換が、指名検索を育てる一手になります。
5. まとめ:指名検索を増やしたい。でも、士業には「名前の壁」がある
ここまで、消耗戦から抜け出す鍵が「指名検索」であり、そのために「AIに推薦されること」と「人の記憶に残ること」の2つが大切だとお伝えしてきました。
一般キーワードで消耗し続けるのではなく、名前で選ばれる状態を作る。これが、AIと広告費高騰の時代を生き抜く、最も本質的なブランディング戦略です。
ところが、ここで士業ならではの、大きな壁が立ちはだかります。
「よし、事務所の名前を覚えてもらおう」——そう思っても、士業の事務所名には、記憶に残りにくい事情が多いのです。
たとえば、
- 代表者の姓をそのまま冠した事務所名は同姓同名が多く、他の事務所と埋もれてしまう。
- 「〇〇市法務事務所」のような名前は地名と混ざって検索しづらい。
- あるいは、長くて覚えにくい正式名称。
——せっかく指名検索を増やそうにも、その「指名される名前」自体にハードルがあるのです。
では、事務所の正式名称を変えずに、この「名前の壁」を突破するにはどうすればいいのか。
実は、それを解決する方法があります。
事務所名はそのままに、覚えてもらいやすい「入口」を別に作る「サービス名ブランディング」という考え方です。
次回のコラムでは、この具体的な方法を、実例を交えて詳しく解説します。


