
社会保険労務士、行政書士の先生方の中に、こんな経験をされた方はいないでしょうか。「障害年金のご相談」「各種許認可のサポート」といった、ごく正当な業務の広告を出そうとしたら、Google広告で繰り返し不承認になり、どうしても掲載できない——。
広告の文言を直しても、ランディングページを調整しても、なぜか通らない。心当たりのある先生もいらっしゃるかもしれません。
これは、先生の広告や事務所に問題があるからではありません。Google広告の「政府発行書類と行政サービス」というポリシーによる、業種単位の制限が原因です。そして厄介なことに、この制限を正規に外すための「正攻法」は、日本の士業にとって、実は入口が閉じています。
今回は、リスティング広告の運用管理を手がける当社が、この問題に実際に向き合い、最終的に広告の配信承認までたどり着いた経験から、その構造と、現実的な突破口をお伝えします。
1. 何が起きているのか ― 「業種」で制限される広告
まず、この問題の正体を整理します。
Google広告には、「政府発行書類と行政サービス」というポリシーがあります。これは、政府が発行する公的書類や、政府が提供する行政サービスの「直接的な提供」を宣伝する広告を、原則として「認定された事業者」しか掲載できないようにする、というものです。
ここで重要なのは、Googleがこのポリシーについて、「各事業者が他のポリシーを遵守している場合であっても適用される」と明記している点です。つまり、広告の内容がどれだけ適切でも、「この業種・このサービスに関する広告だ」とシステムに判定された時点で、制限の対象になってしまうのです。
年金、障害年金、各種の行政手続きに関連するサービスは、このポリシーによって、いわば初期設定で制限の対象とされています。社労士・行政書士の先生の広告が繰り返し止まるのは、このためです。しかも、この判定は人の目ではなく、自動化されたシステムによって、一律に行われています。
2. 正攻法の「認定事業者」が、日本の士業には取れない理由
では、この制限を正規に外すにはどうするか。ポリシー上の答えは「認定事業者になること」です。しかし、ここに日本の士業にとっての、大きな壁があります。
Googleの定める「認定事業者」の条件を、正確に見てみましょう。認定事業者と認められるには、「自社のドメインが、政府の公式ウェブサイトからリンクされており、そのサービスを提供することが認められた事業者として明示的に紹介されている」必要があります。
ここで気づかれると思います。日本では、国の役所が、一民間の士業事務所のホームページに、公式サイトから直接リンクを張って「この事務所は正規の事業者です」と紹介する——そうした慣行は、基本的にありません。
つまり、どれだけ正当な国家資格を持っていても、この「政府公式サイトからの直接リンク」という条件を、日本の士業事務所が満たすことは、構造的にほぼ不可能なのです。正攻法とされる「認定事業者」の道は、日本の士業にとっては、入口の時点で閉ざされている。ここで多くの先生が、「もう打つ手がない」と諦めてしまいます。
3. しかし、出口はあった ― 「認定」とは別の申請ルート
結論から申し上げます。諦める必要はありません。認定事業者になる以外にも、広告を配信できる道があります。
このポリシーで受けられる認証には、実は複数の種類があります。「政府機関」「認定事業者」といった枠のほかに、「自社の広告は、政府発行書類や行政サービスの「直接的な提供」を宣伝するものではないため、このポリシーの適用対象外である」として申請する、という選択肢が用意されているのです。
ここが突破口でした。
考えてみれば、社労士や行政書士の先生の業務は、「国民の代わりに公的書類そのものを発行・交付する」ことではありません。国家資格に基づいて、相談に応じ、助言し、書類の作成を支援することが本質です。つまり、ポリシーが制限したい「政府発行書類・行政サービスの直接的な提供」とは、本来、性質が異なります。
この「当事務所の広告は、サービスの直接的な提供ではなく、専門家による相談・支援の案内である」という点を、正しく申請し、認めてもらう。これが、日本の士業にとっての現実的な出口です。
4. 実際に「承認」を得るまで ― 一次情報としてお伝えすること
とはいえ、この道も、申請ボタンを押せば自動で通る、という甘いものではありませんでした。当社が実際に承認までたどり着くには、大きく3つの取り組みが必要でした。
1つ目は、ランディングページを「相談・支援」の表現に徹底して整えること。
自動判定のシステムは、ページの中の言葉に反応します。「代行」「取得します」「全てお任せください」といった、サービスの直接提供を思わせる表現が残っていると、「これは制限対象だ」と判定されやすくなります。そこで、ページ全体を「ご相談」「手続きの支援」「書類作成のサポート」という、業務の実態に即した表現へ、一つひとつ見直しました。これは言葉のごまかしではなく、実態である「相談・支援業務」に、表現を正しく合わせる作業です。
2つ目は、認定ではなく、適用対象外としての申請を選ぶこと。
満たせない「認定事業者」を目指し続けるのではなく、「直接的な提供を宣伝していない」という正しい枠で申請し直しました。入口の選択を間違えないことが、遠回りを避ける鍵でした。
3つ目は、Googleのサポートへ、日本の制度を粘り強く説明し、理解してもらうこと。
これが最も根気の要る工程でした。やりとりの相手が海外の担当者である場合、「日本には社会保険労務士・行政書士という国家資格があり、これらは国から認められた正当な専門家である」という、日本では当たり前の前提から、丁寧に説明する必要があります。一度で伝わらないこともあり、繰り返し、こちらの正当性を根拠とともに伝え続けました。
その積み重ねの末に、ようやく「承認」の通知が届きました。
補足:承認されても「制限付き」と表示される ― それは正常な状態です
ひとつ、実際に承認を得た先生が戸惑いやすい点を、先回りしてお伝えしておきます。
無事に承認が下りた後も、広告の管理画面上では、ステータスが「有効(制限付き)」と表示されます。「承認されたはずなのに「制限付き」とは、どういうことか。何か失敗したのではないか」と、不安に思われるかもしれません。
しかし、これは正常な状態です。この点は、Googleのサポートからも明確に案内されています。
「有効(制限付き)」とは、ポリシーを遵守したうえで、規制のある分野で運用されている広告に付く、標準的なステータスです。広告の配信が止まっているわけではありません。表示される場所やタイミングに一定の制限はあるものの、広告は正常に配信されていることを示しています。
つまり、この表示が出ていれば、それは「きちんとルールを守って、正しく配信できている」というサインなのです。実際、当社が運用する案件でも、この表示が出た状態で、問題なく配信され、成果も出ています。承認後にこの表示を見ても、どうか慌てないでください。
5. まとめ ― 諦めなければ、道はある
Google広告の「政府発行書類と行政サービス」ポリシーによる制限は、正規の資格を持つ先生方にとっては、本来受ける必要のない制約です。そして、正攻法である「認定事業者」の道は、日本の士業には構造的に閉ざされています。
しかし、今回お伝えしたとおり、出口はあります。「直接的な提供ではなく、専門家による相談・支援である」という実態を、ページの表現と申請で正しく示し、サポートに粘り強く理解を求めていく。この道筋で、実際に広告を配信できる状態まで、たどり着くことができます。
大切なのは、小手先で判定をすり抜けようとするのではなく、「正規の資格者が、正当な相談業務を行っている」という事実を、正しく伝え切ることです。ただ、その申請とやりとりには、ポリシーの正確な理解と、相当な根気が求められます。
広告が止まって困っている、何度申請しても通らない——そうした状況にお困りの先生は、ご自身で苦労を抱え込まず、広告運用の専門家にご相談ください。先生には、本来の専門業務に集中していただく。その環境を整えるのが、私たちの役割です。
(参考)Google広告の該当ポリシー
Google広告ポリシーヘルプ「政府発行書類と行政サービス」
https://support.google.com/adspolicy/answer/13156083※本コラムの記載は、上記ポリシー(2026年時点)および当社の実務上の経験に基づいています。ポリシーの運用は変更される場合があります。


