士業の先生方にとって、ウェブサイトやコラムを通じた情報発信は、専門性を示し、潜在的な依頼者との信頼関係を築くための重要な集客手段です。これまで多くの事務所が、特定のキーワードで「検索順位1位」を目指すSEO対策に注力されてきたことでしょう。
しかし、その常識が今、静かに、しかし確実に変わり始めています。Google検索に搭載された「AI Overview（AIによる概要）」の登場により、ユーザーが情報を得るプロセスが根本から変化しつつあるからです。
これからの時代、検索順位で上位にいるだけでは、依頼者に選ばれる事務所になることは難しくなるかもしれません。このコラムでは、なぜ「検索順位だけ」では不十分なのか、そして、これからのWeb集客の鍵を握る「AIに選ばれる」コンテンツの作り方について解説します。
なぜ「検索順位1位」だけでは安心できないのか？
Googleで何かを検索した際、検索結果の最上部にAIが生成した「答えの要約」が表示されるのを目にしたことはありませんか。これが「AI Overview」です。
ユーザーは、複数のサイトを一つひとつクリックして情報を探す代わりに、まずこのAIが示す答えで疑問を解決しようとします。これは、たとえ先生のサイトが検索順位で1位を獲得していても、AIの回答の下に表示されてしまい、クリックされることなく終わってしまう可能性が高まることを意味します。
ユーザーの目に最初に触れる「AIの回答」。その情報の「出典元」として自事務所のサイトが引用されることが、これからのWeb集客において極めて重要な目標となるのです。
AIに「選ばれる」士業コンテンツ、３つの必要条件
では、どうすればAIに出典元として選ばれるのでしょうか。特別な裏技は必要ありません。むしろ、士業の先生方が本来持つ「強み」を最大限に活かすことが答えとなります。
条件１：圧倒的な『専門性』と『信頼性』を示す
AIは、情報の正確性と信頼性を何よりも重視します。特に、法律や税務といった正確性が求められる分野ではその傾向が顕著です。先生方の「専門知識」こそが、AIに評価される最大の武器になります。
- 誰が書いたかを明記する： 記事には必ず著者（先生の名前や経歴）や監修者情報を記載しましょう。事務所概要ページも充実させ、専門分野を明確にすることが有効です。
- 情報の根拠を提示する： 法律の条文、判例、公的機関のデータを引用し、出典元へリンクを張ることで、記事の信頼性は飛躍的に高まります。
条件２：読者の疑問に『直接』答える明快さ
AIは、ユーザーの質問に対して最も的確に答えている部分をウェブページから探し出します。記事の構成を少し工夫するだけで、AIが情報を抽出しやすくなります。
- 結論を冒頭に書く： 「遺言書の書き方とは？」といったテーマであれば、記事の冒頭で「遺言書の書き方とは、法的に定められた要件を満たして自身の最終意思を記すことです。主な種類として自筆証書遺言と公正証書遺言があります。」のように、まず結論と概要を簡潔に示しましょう。
- 「よくある質問」を用意する： 記事の最後に「Q&A」セクションを設け、想定される具体的な質問と、それに対する簡潔な回答をまとめるのも非常に効果的です。
条件３：悩みを『丸ごと』解決する網羅性
一つのテーマについて、関連情報まで含めて広く深く解説されている記事は、ユーザーにとってもAIにとっても価値が高いと判断されます。
- 一つの記事で完結させる： 例えば「相続放棄」について書くなら、その手続きだけでなく、メリット・デメリット、期限、必要書類、関連する「限定承認」との違いまで解説することで、「この記事を読めば相続放棄の全体像がわかる」という状態を目指します。ユーザーが次に抱くであろう疑問を先回りして解説することが鍵です。
【士業別】AIが求める「ユーザーニーズ」の考え方
AIに評価されるコンテンツを作るには、潜在的な依頼者が「どんな言葉で、どんな悩みを検索しているか」を深く理解することが不可欠です。ここでは各士業の先生方がターゲットとすべきユーザーニーズの考え方を簡潔にご紹介します。
弁護士の先生方へのユーザーニーズ
「離婚 慰謝料 相場」「残業代 未払い 請求方法」など、切迫したトラブルの具体的な解決策や法的リスク、費用感を求める検索が多い傾向にあります。判例を交えながら、「自分の場合はどうなるのか？」という問いに答える記事が求められます。
司法書士の先生方へのユーザーニーズ
「相続登記 自分で」「会社設立 費用」など、手続きの流れや必要書類、費用といった実践的な情報を求める検索が中心です。専門用語を避け、図やチェックリストを用いて手順を分かりやすく示すことが喜ばれます。
税理士の先生方へのユーザーニーズ
「確定申告 やり方」「インボイス制度 わかりやすく」など、複雑な制度の解説や節税対策を求める検索が主流です。法改正のポイントなど、最新情報をいち早く、正確に解説することで権威性を示せます。
社労士の先生方へのユーザーニーズ
「育休 手続き」「ハラスメント 対策」など、企業の経営者や人事担当者が直面する労務問題に関する検索が多いです。助成金の活用法など、企業側にメリットのある情報も加えると、より価値が高まります。
行政書士の先生方へのユーザーニーズ
「建設業許可 要件」「古物商許可 取り方」など、許認可に関する具体的な要件や手続きを調べる検索が中心です。「なぜこの書類が必要なのか」といった背景まで解説すると、読者の理解が深まります。
弁理士の先生方へのユーザーニーズ
「商標登録 費用と期間」「特許出願 方法」など、知的財産を守るための手続きや費用に関する検索が主流です。具体的な事例を挙げながら、権利取得のメリットを明確に伝えることが重要です。
このように、ご自身の専門分野における潜在顧客の「最初の疑問」に寄り添うことが、AIに選ばれる第一歩となります。
【まとめ】AI時代は、士業の専門知識が正しく評価される時代
「AIに選ばれるコンテンツ」と聞くと、何か新しい技術的な対策が必要だと感じられるかもしれません。しかし、その本質は「悩みを抱えた相談者に対し、専門家として誠実に、分かりやすく、そして包括的に情報を提供する」という、先生方が日々の業務で実践されている姿勢そのものです。
検索順位という数字だけを追う時代からAIを含めた複合的な視点で考える時代に移行しているように感じます。これは士業の先生方が持つ専門知識という「本質的な価値」が、これまで以上に正しく評価される時代の到来だと考えます。
この記事をきっかけに、ぜひ既存のコラムの見直しや、新しい記事の作成に取り組んでみてください。読者の悩みに真摯に向き合うひとつの記事が、未来の依頼者を貴所に導く、有効なツールとなるはずです。
税理士のホームページはわたしが担当します
取締役/WEBディレクター 加藤 忠
恐らく日本で一番多く士業のホームページ制作に関わっている人（当社調べ）。
日本でのインターネット創世記よりホームページをコツコツ作りはじめてかれこれ 20ウン年、紙のデザインから WEBのデザイン、更にリスティング広告の運用管理まで幅広い提案ができるのが特徴。
制作の人間ならではの、よりリアルで丁寧なご説明をさせて頂きます。
