近年、スマートフォンの音声アシスタント(Siri、Googleアシスタントなど)やスマートスピーカー(Google Home、Amazon Echoなど)の普及により、音声を使った情報検索が急速に増加しています。特に、手を離せない状況(運転中、料理中など)や、文字入力が苦手な層にとって、音声検索は非常に便利な手段となっています。
士業事務所のホームページも、この音声検索のトレンドに対応することで、新たな顧客獲得の機会を広げることができます。
音声検索と従来のテキスト検索の違い
音声検索と従来のテキスト検索には、いくつかの重要な違いがあります。
- 自然言語での検索(会話型):
- テキスト検索の例: 「相続 司法書士 新宿」「会社設立 手続き 費用」
- 音声検索の例: 「新宿で相続に強い司法書士を探して」「会社を作るにはどんな手続きが必要?費用はどれくらい?」 音声検索は、まるで人と会話するように、より長く、具体的で自然な話し言葉で質問される傾向があります。
- 質問形式の増加:
- 「〜とは何ですか?」「〜の方法は?」「〜できる司法書士はどこ?」といった質問形式が多いです。
- 情報取得のスピード:
- 音声検索のユーザーは、簡潔で直接的な回答を求めています。多くの場合、検索結果のトップ、あるいは数少ない情報の中から答えを得たいと考えています。スマートスピーカーの場合、1つの情報源から読み上げられることがほとんどです。
- ローカル検索の重視:
- 「近くの司法書士」や「〇〇駅周辺の弁護士」など、位置情報を含んだ検索が非常に多いです。
士業事務所のホームページが音声検索に対応するための具体的な対策
これらの特性を踏まえ、士業事務所のホームページが音声検索に対応するために講じるべき具体的な対策は以下の通りです。
1. 自然言語・会話型クエリへの最適化(コンテンツ)
- Q&A形式のコンテンツ作成: 依頼者が音声で尋ねそうな質問を想定し、それに対する明確な回答をQ&A形式でホームページに掲載します。「よくある質問」ページを充実させるのは非常に有効です。
- 例:「相続放棄の手続きはどのように進めますか?」→「相続放棄の手続きは、まずご自身が相続人になったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。」
- 口語体・話し言葉の活用: ブログ記事やコラムのタイトル、見出し、本文に、口語的な表現や話し言葉を取り入れます。
- 例:「相続で困ったらどうすればいい?」「遺言書って、どうやって書くの?」
- 長文キーワード(ロングテールキーワード)の網羅: 短いキーワードだけでなく、「亡くなった父の不動産の名義変更、手続きの流れは?」「中小企業のM&Aに関する税金は?」といった、より具体的な長いキーワードを意識してコンテンツを作成します。
2. 強調スニペットへの対応(構造化データとコンテンツ)
音声アシスタントは、Googleの「強調スニペット(Featured Snippet)」や「ナレッジパネル」から回答を読み上げることが多いため、これらに採用されるようなコンテンツ作りが重要です。
- 簡潔で分かりやすい回答: 質問に対する答えを、段落の冒頭や箇条書きで簡潔にまとめることを意識します。
- 構造化データの利用: FAQページなどで構造化データ(Schema.orgのFAQPageなど)を適切にマークアップすることで、検索エンジンがコンテンツの内容をより正確に理解し、強調スニペットとして採用されやすくなります。
3. ローカルSEOの強化(Googleビジネスプロフィールと連携)
「近くの司法書士」といったローカル検索は音声検索で特に多いため、MEO(Map Engine Optimization)対策は必須です。
- Googleビジネスプロフィールの最適化:
- 正確な情報: 事務所名、住所、電話番号、営業時間、WebサイトURLを正確に登録し、常に最新の状態に保ちます。
- カテゴリの選択: 適切なビジネスカテゴリ(例: 司法書士、法律事務所)を選択します。
- 写真の充実: 事務所の外観、内観、士業の顔写真などを掲載し、視覚的な情報を提供します。
- 口コミへの対応: 顧客からの口コミに丁寧に返信し、信頼性を高めます。
- 地域名の明記: ホームページのタイトル、見出し、本文、メタディスクリプションなどに、事務所がある「地域名(例: 新宿区、渋谷、東京)」や「最寄り駅名」を積極的に記載します。
- アクセスページの充実: 事務所までの詳細なアクセスマップ、最寄り駅からの道のり、駐車場情報などを分かりやすく掲載します。
4. Webサイトの技術的最適化(表示速度とモバイルフレンドリー)
音声検索のユーザーは、即座に情報を得たいと考えています。Webサイトの表示速度やモバイルでの使いやすさは、Googleの検索ランキング要因でもあり、音声検索の回答品質にも影響します。
- ページの表示速度の高速化: 画像の圧縮、サーバーの最適化、キャッシュの活用などにより、ページの読み込み速度を向上させます。
- モバイルフレンドリーデザイン: スマートフォンやタブレットなど、あらゆるデバイスで快適に閲覧できるレスポンシブデザインを採用します。音声検索はモバイルデバイスからの利用が多いため、これは必須です。
- SSL化(HTTPS): Webサイトが安全であることを示すSSL証明書を導入し、HTTPS化します。セキュリティは検索エンジンの評価要因です。
5. コンテンツの網羅性と専門性
音声アシスタントは、その質問に対して最も適切で網羅的な情報を提供しているページを評価する傾向があります。
- 包括的なトピックカバー: 特定のテーマ(例: 相続、労務管理、会社設立)について、網羅的に情報を提供する「トピッククラスター」のようなコンテンツ構造を意識します。
- 専門性と権威性の提示: 士業ならではの専門知識を深掘りし、他では得られない質の高い情報を提供することで、検索エンジンからの評価を高めます。
まとめ:音声検索は「ユーザーファースト」の追求
音声検索への対応は、つまるところ自然検索対策の延長線上にあって「ユーザーファースト」の徹底に繋がると言えます。ユーザーがどのような状況で、どのような言葉で、どんな情報を求めているのかを深く理解し、それに対して最も分かりやすく、迅速に、そして正確に情報を提供できるホームページを構築することです。
士業事務所の皆様が、未来を見据えたデジタルマーケティング戦略を考える上で、この「音声検索への対応」は、決して無視できない重要な要素となるでしょう。ホームページの改善や新規制作を検討される際は、ぜひこの視点を取り入れてみてください。